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英語なんて怖くない
著者 松島永子(筆名)
2001年1月10日(水)産経新聞静岡版”学びと教えの現場から”掲載
英語なんて怖くない
新世紀。教育の場でも新しい試みが始まっている。昨年度から私の学校では年間二回、外国人講師を招いての授業を実施している。
来てくださったのは、アメリカ人のダニエルさんという男性。
「グッモーニン! 私の名前はダニエルでーす。でもダニーって呼んでね。」
教室へ入るなり、満面の笑顔で子供たちに話しかける。
「レッツ セイ ダニー。ダニーって言ってみて。」
子供たちはみんなで声をそろえて「ダニー」と叫んだ。
「OK。グーッ。レッツプレイじゃんけんゲーム。じゃんけん知ってる?ohグーッ!」
とにかくリズムとテンポがよい。英語と日本語混じりの巧みな話術で、緊張していた二年生の子供たちをどんどん引きこんでいく。
「ストーン シザーズ ペーパー」
ぐぅ・ちょき・ぱぁを大きくかいた絵を担任教師がすかさず掲げた。ダニーと声をそろえて子供たちも手を挙げながら言い始める。
「ストーン シザーズペーパー」
「勝ったぁ。」
と大喜びだ。
いちいち細かい説明はしない。でも、子供たちは絵を見てダニエルさんの発音を聞いてストーン=ぐぅということを理解する。遊びの中で自然に英語に触れているのだ。
フルーツバスケット。椅子とりゲームである。
ダニエルさんが
「ビャナーナ!」と言った。
発音の仕方が自分たちとまるで違う。「バナナ」のことだと理解するまでの一瞬の間。しかし子供たちはすぐに慣れてしまう。ダニエルさんの言葉を聞き逃すまいと,耳に神経を集中させているのがよくわかった。
1時間はあっという間に過ぎた。
「グッバイ。ダニエル。サンキューベリーマッチ。」
みんなで練習してあった挨拶を元気に言う。その後一人一人握手をしてもらって子供たちは大喜びだった。昼休みには休憩中のダニエルさんのところへサインをもらいに行く子供が続出。控え室の前の廊下には長蛇の列ができていた。
たった一時間の授業。しかし反響は大きかった。
「ダニエル先生の授業とても楽しかったです。ぼくは英語がしゃべれなくて大丈夫かなぁと思っていたけどにこにこして握手してくれてとてもうれしかった。今度いつ来てくれますか。」
「バナナのことを言っているのが、最初何だかわかりませんでした。本当の英語ってすごいと思いました。」
「ダニエルさんは鼻が高くてピノキオみたいでした。英語がわからなくても思いきってサインをもらいに行ってサンキューと言ったら,頭をなぜてくれました。」
子供たちは一人残らず全員が日記にその1時間のことを書いてきたのである。
そればかりではない。
子供たちはダニエルさんとの一時間がいかに楽しかったのかを家庭で力説したようだ。保護者からも
「子供が興奮して帰ってきました。とても楽しかったようです。またこういう機会があるといいですね。」
「英語、と聞いて心配していましたが、子供にとっては楽しく遊べた1時間、という感覚だったようですね。安心しました。」
という内容の手紙がたくさん届いた。
外国人講師、と聞いて一番身構えて緊張していたのは他でもない私であった。
ダニエルさんとの打ち合わせでも、英単語の羅列に終始して冷や汗をかいた。「ニホンゴ、ダイタイOKデス。」と言われて、どれほどほっとしたことか。
小学校での英語教育。難しいことはさておき、気軽に外国人と接する機会が増えれば、私のような大人は減っていくかもしれない。この二十一世紀は、まさに国際化の時代だ。